日本ウイグル協会副会長 薩吾提·穆罕默德
2025年6月3日
皆様、こんにちは。
先ほど、ご紹介頂いた日本ウイグル協会副会長の田中サウトです。
本日は、「劉暁波とは何者か 89.64天安門事件36周年記念」イベントにご招待いただき、光栄に存じます。
ここに、劉暁波氏をはじめ、天安門事件で中国共産党による迫害を受け、犠牲となったすべての方々に、心からの敬意と哀悼の意を表します。同時に、東トルキスタンにおけるウイグルジェノサイドを終わらせるために、ウイグル人と一緒に正義の声を上げてきた友人たちにも感謝を申し上げます。
36年前、多くの学生や一般市民が街頭に繰り出し、中国共産党に対し、政治体制の改革と腐敗した官僚への処罰を求めました。民主主義の国では、一般市民や学生が政府を批判するのは当たり前のことです。しかし、鄧小平をはじめとする中国共産党幹部は、学生たちの正当な要求を受け入れず、戦車や軍隊で彼らを鎮圧しました。それ以来、政治体制の改革といった話題は中国本土でタブーとされ、議論することすら禁じられています。
学生運動の最中、多くの人々は中国共産党が学生運動を武力で弾圧することを悟り、できる限り中国を離れることを選びました。しかし、劉暁波氏は多くの人々とは正反対に、滞在先のアメリカから北京に戻ってきたのです。彼は天安門広場で学生たちと一緒に、6月4日の最後の瞬間まで粘り強く主張を続けました。そのことに、私を含む多くの人々が感動しました。
2010年、彼は中国における民主化の推進と人権尊重における重要な役割が認められ、ノーベル平和賞を受賞しました。ある調査によると、ウイグル人の90%以上が劉暁波氏のノーベル平和賞を支持しました。
劉暁波氏自身がウイグル独立運動に参加したり、直接支持したことはなかったものの、彼が携わった「08憲章」に、中国のすべての民族が平等な権利を享受し、少数民族地域は真の自治権を持つべきであり、民族抑圧に反対し、民族対話と和解を主張すべきだと提唱しました。
劉暁波氏の立場は、一部のウイグル人知識人に思想的影響を与えた。例えば、著名なウイグル人反体制活動家であるイリハム・トフティ氏は、劉暁波氏と同様に平和的改革と民族対話を主張しました。しかし、彼はウイグル人の正当な権利を主張したことが罪とされ、中国共産党によって投獄されました。
2016年、習近平はチベットで辣腕を振舞った陳全国を所謂「新疆ウイグル自治区」のトップに任命し、ウイグル人の大規模な逮捕と投獄を始めました。2018年8月、国連人権理事会は中国の人権状況を審査し、「ウイグル自治区」の強制収容所に100万人以上のウイグル人が拘留されていることを初めて認定しました。また、2022年8月、国連人権高等弁務官事務所がウイグルで重大な人権侵害が行われている可能性が高いという「報告書」を発表しました。
国際社会の多くの国々が、中国の蛮行に対し、正義を求めて声を上げ始めました。2020年6月、米国政府は「ウイグル人権法」を可決しました。これは、ウイグル人の歴史において、外国政府がウイグル人のための法律を制定した初めてのケースです。2021年1月、トランプ政権は中国政府がウイグル人に対するジェノサイド政策を実施していることを公式に認めました。その後、バイデン政権はこの政策を引き継ぎました。現在、英国、カナダ、オランダ、台湾を含む11カ国の議会は、中国共産党によるウイグル人へのジェノサイド行為を認定しています。
同様のジェノサイド決議を採択していない国もありますが、中国政府によるウイグル人迫害を非難する決議は採択しています。日本もその一つです。
一部の人々の中には、ウイグル問題はウイグル人と中国人の間のトラブルかのようにとらえられていることがあります。ここで強調しておきたいのは、ウイグル問題は決してウイグル人と中国人の間の問題ではなく、その本質は、中国共産党が普遍的価値観に反し、ウイグル人に対する人種差別と弾圧を行っていることです。ここで、6・4天安門事件とウイグルジェノサイドの悲劇が2度と起こらないように、皆様が私たちと共に声を上げてくださることを願っています。
6・4天安門事件を記念することは非常に重要です、しかし、現在進行形として続いているウイグルジェノサイドを忘れてもなりません。
最後に、アメリカの公民権運動の指導者であったファニー・ルー・ハマー(Fannie Lou Hamer,1917-1977)の言葉を引用し、私のスピーチを締めくくりたいと思います。
「すべての人が自由になるまで、誰も自由にはなれない。」
どうもありがとうございました。