「八九・六四天安門事件37周年記念展」スピーチ
日本ウイグル協会副会長 田中サウト
2026年6月3日

皆様、こんにちは。
先ほど、ご紹介頂いた日本ウイグル協会副会長の田中サウトです。
本日は、「八九・六四天安門事件37周年記念展」にお招きいただき、心より感謝申し上げます。
まず最初に、1989年6月4日、中国共産党による武力弾圧によって命を奪われた学生、市民、そして自由と民主主義を求めて立ち上がったすべての方々に、深い哀悼の意を表します。
37年前、多くの若者たちが北京の天安門広場に集まりました。彼らが求めたものは、決して暴力や革命ではありませんでした。腐敗のない政治、言論の自由、民主的改革、そして人間として尊厳を持って生きる権利です。しかし、中国共産党は対話ではなく、戦車と銃弾によって応えました。その結果、多くの尊い命が奪われ、事件後には徹底した情報統制が行われました。現在の中国では、「六四」という言葉すら自由に語ることができません。若い世代の中には、天安門事件そのものを知らない人も少なくありません。しかし、歴史を消し去ることはできません。天安門事件は、中国共産党が「自由を求める声」に対して、どのように向き合う政権なのかを世界に示した歴史的事件でした。
当時、西側諸国には、「中国は経済発展すれば、いずれ民主化するだろう」という期待がありました。しかし、中国共産党は天安門事件で学生たちを武力弾圧した時点で、「民主化を拒否する」という明確な答えをすでに示していたのです。そして現在、習近平政権の下で進められている強権体制は、まさにその延長線上にあります。
私はウイグル人として、この問題を決して過去の出来事として見ることができません。
なぜなら、今まさに東トルキスタン、いわゆる「新疆ウイグル自治区」で起きていることは、天安門事件の延長線上にあるからです。現在、ウイグル社会は巨大な監視システムの下に置かれています。顔認証、スマートフォン監視、DNA採取、宗教活動への制限など、人々の日常生活のすべてが管理されています。
さらに2017年以降、300万人とも言われるウイグル人が、「再教育施設」という名の強制収容所へ送られました。彼らは家族と引き離され、自らの言語、宗教、文化を否定され、中国共産党への忠誠を強制されています。また、強制労働、強制不妊、児童の隔離教育など、深刻な人権侵害も行われています。
特に強制労働の問題は、日本とも無関係ではありません。ウイグル人の強制労働によって作られた製品が、日本市場にも流入している現実があります。さらに、ウイグル人の子どもたちは親から引き離され、中国語教育を中心とした寄宿学校へ送られています。これは単なる弾圧ではありません。民族の文化、宗教、アイデンティティそのものを消し去ろうとする政策です。
今年3月、中国政府は全国人民代表大会で「民族団結促進法」を採択し、7月から施行する予定です。この法律によって、漢民族以外のウイグル、チベット、モンゴルをはじめとする各民族への強制同化政策は、さらに強化されることは間違いありません。
ウイグル人と漢民族の平和的共存を訴えた経済学者イリハム・トフティ氏、ウイグルの民間伝承を研究していたラヒラ・ダウト氏をはじめ、多くのウイグル人知識人や学者が拘束されました。また、中国民主化を訴えたノーベル平和賞受賞者・劉暁波氏も投獄され、自由を奪われたまま亡くなりました。中国共産党が本当に恐れているのは、暴力ではありません。真実を語る声であり、人間の自由への願いです。
近年、国際社会はようやくウイグル問題に注目し始めました。アメリカ、カナダ、イギリスなど多くの国々が、中国政府によるウイグル人迫害を「ジェノサイド」あるいは「人道に対する罪」として認定しています。2022年には、日本の国会でも、「ウイグル等における深刻な人権状況に対する決議」が採択されました。しかし現実には、今なお多くのウイグル人が自由を奪われ、家族の消息すら分からない状況が続いています。私自身も、その一人です。天安門事件が「歴史の悲劇」であるならば、ウイグルジェノサイドは「現在進行形の悲劇」です。
だからこそ、私たちは沈黙してはなりません。天安門事件を記憶することは、中国共産党による歴史の抹消に抵抗することです。そして、ウイグル人の苦しみに声を上げることは、未来の新たな悲劇を防ぐことにつながります。
自由、人権、民主主義は、中国人だけのものでも、ウイグル人だけのものでもありません。これらは、すべての人類に共通する普遍的な価値であり、誰もが享受すべき基本的な権利です。そして、ウイグル人をはじめとする各民族には、自らの将来を決定する民族自決権が保障されなければなりません。
どうか皆様には、天安門事件を忘れないでいただきたい。そして、今も続くウイグル人への弾圧にも関心を持ち続けていただきたいと思います。沈黙は、弾圧する側を利するだけです。だからこそ、私たちは声を上げ続けなければなりません。
共に自由と人権を守るため、行動していこうではありませんか。
ご清聴ありがとうございました。

