ノーベル平和賞授賞式 東京の活動家、王進忠氏も参加

2010年12月9日午後、オスロの中国駐ノルウェー大使館前で、「劉暁波の釈放」を求めるデモに参加する王進忠氏(右)

 ■日本政府は中国民主化に冷たい

10日に行われた中国民主活動家、劉暁波(りゅう・ぎょうは)氏へのノーベル平和賞授賞式に参加するため、世界各地に亡命している中国の民主活動家たちがノルウェーの首都オスロに集まった。1989年の北京の天安門事件の主役だった大学生リーダーのウアルカイシ氏や、ウイグル人女性活動家のラビア・カーディル氏らのほか、東京を活動拠点としている王進忠氏(47)の姿もあった。

 「21年間、国を捨てていろいろな苦労を重ねてきたが、仲間が国際社会に評価されたことで私も報われたような気がした。感無量です」と、王氏は目に涙をうっすらと浮かべ、劉氏の受賞を祝福した。

 王氏は北京市出身。芸能人を輩出する名門大学、中央戯劇学院を卒業後、国営中央テレビ(CCTV)に就職した。閉鎖的だった1980年代前半の中国に、いち早く米国の流行音楽を紹介する番組を企画するなど、20代にして名物プロデューサーとまでいわれた。だが「中国の若者の精神を汚染した」と保守派指導者から名指しで批判され、停職処分に。87年に来日し東京大学の大学院で学んだ。

 89年春に天安門事件につながる民主化運動が北京で始まると、自身の体験から「中国には自由が必要だ」と痛感し、中国人留学生を集めて民主化を求めるデモを次々と主導した。このため、中国政府の帰国禁止のブラックリストに載った。

 工事現場の労働者、中華料理店の洗い場など日本各地で転々とアルバイトをしながら民主化運動を続け、2004年から米国が運営する自由アジア放送の東京駐在記者になった。「自分の苦労は自己責任で割り切るが、国内にいる弟が左遷されるなど家族に迷惑をかけたときは申し訳なくて」と王氏。「年老いた両親に何かあれば、投獄覚悟で帰るしかない」とつぶやいた。

 これまで、日本の企業から資金援助を受けるなどしたことも多い。だが「日本政府は欧米と比べ中国の民主化問題に関して基本的に冷たい」と語る。米国のほとんどの議員が劉暁波氏への支持を表明しているのに対し、日本では支持を名乗り出た議員は11人しかなかったという。

 「中国や北朝鮮など日本とトラブルを抱える独裁国家は近い将来、民主化されることが予想される。アジアの大国としての責任だけではなく、日本の国益のためにも、もっと人権や民主化運動に関心をもってもらいたい」と語る。

《産経新聞》から転載したものです。